コラム

ドーピングの基本

なぜドーピング検査は、過去の大会まで遡って行うのか

“オリンピックで金メダルを取った選手の尿検査をしたところ、ドーピング禁止成分が出たために、メダル剥奪になった”
最近、こういったニュースを度々聞くようになりました。

ロシアによる国家ぐるみのドーピング違反が判明してから、国際オリンピック委員会(以下、IOC)は北京・ロンドン・ソチオリンピック時のドーピング再検査の実施を加速しており、メダルの剥奪報道が後を絶ちません。ここで一つ、疑問が出る方がいるのではないでしょうか。「なぜドーピング検査は過去に遡って再検査を行う必要があるのか」です。そこにはどんな理由があるのでしょうか。

◼︎オリンピックはクリーンであることが最重要
IOCはオリンピックにおいて、ドーピングによる違反や競技の八百長などは一切認めていません。フェアプレーであることを何よりも重視しています。

https://www.olympic.org/the-ioc/support-and-protect-clean-athletes
出典:国際オリンピック委員会

その根底には、未来を担う子供達に、アスリートの戦う姿を通して努力の大切さを知ってほしいという想いがあります。ドーピングという行為は、スポーツの価値を損なうだけでなく、アスリートを手本に「表彰台に立ちたい」と努力をする子供の夢や希望を奪ってしまうことにもなります。また、ドーピング違反をせずに努力をしてきたアスリートに対する侮辱にもつながってしまいます。
こういった考えがあるゆえ、ドーピング検査においては過去の大会までさかのぼり、当時の技術では検出できなかった禁止物質を、今の技術をもって分析することが必要なのです。
“クリーン”であることを証明することで、オリンピック・スポーツの価値を守りたいのだと考えられます。

◼︎検査の技術力は高い
日本でドーピング検査を行っている機関は、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)公認のドーピング検査機関でもある株式会社LSIメディエンスです。一説によると、使用する検査機器は50メートルプール10面分の広さに、目薬一滴ほどのドーピング物質を垂らしたとしても検出できる技術力があると言います。
なお、以前は尿検体を保存する期間は8年間でしたが、2015年より尿検体は10年間保存する規定となりました。
技術革新が進むにつれて、ドーピング違反が見つかる確率が高くなるとは思いますが、同時に隠蔽する技術も高くなることを考えると、今後も“イタチごっこ”が続くことは否定できないでしょう。未来を担う子供達のためにも、選手自身のためにもドーピング違反がなくなることを願うばかりです。