コラム

ドーピングの基本

コンタクトレンズの保存液が原因?キスでドーピング?

2018年平昌オリンピック開幕直後、スピードスケート・ショートトラック男子日本代表の斎藤慧選手から「アセタゾラミド(Acetazolamide)」という利尿薬が検出され、失格になったことはまだ記憶に新しいのではないでしょうか。
原因については様々な憶測が飛びかい、一時は含まれるはずのないコンタクトレンズの保存液が原因ではないかとも報道され業界内に混乱を招きましたが、結局原因については判明していないのか、4月現在、何も報告はありません。
今回は過去の陽性事例をもとに利尿薬について解説します。

■利尿薬は心臓に大きな負荷をかける可能性も
利尿薬とは、強制的に尿として水分を排泄する作用を持つもので、医療現場では主に血圧を下げることを目的に、高血圧の治療に使用されています。
スポーツ界においては、ボクシングや柔道といった階級制のアスリートの減量を楽にしたり、尿量を増やして尿中の薬物濃度を薄め、ドーピングの隠ぺい行為にも使われたりする可能性があることから、使用が禁止されています。
利尿薬を使用すると、一部の利尿薬は作用が強く、少量でも脱水や低血圧を起こしたり、ものによっては血糖値を異常に高めたり、心臓に大きな負荷を加え不整脈になるものまであるので、危険な成分でもあることも覚えておくといいでしょう。

■利尿薬による過去のドーピング事例

恋人とのキスにはご注意を?
2017年7月、耳を疑いたくなるような報道がありました。恋人との熱烈なキスが原因でドーピング違反になったというのです。
報道があったのは、リオデジャネイロオリンピックの陸上男子4×400メートルリレーで金メダルを獲得したアメリカ陸上界の英雄、ギル・ロバーツ(Gil Roberts)選手。同年3月に行われたドーピング検査の結果「プロベネシド(Probenecid)*1」が検出されました。
一部の報道によると、原因は恋人であるアレックス・サラザール(Alex Salazar)さんとの熱烈なキスにあり、サラザールさんが副鼻腔炎の治療で服用していた「Moxylong*2」という薬が、キスでロバーツ選手の体内に入り込んでしまったというのです。
本当にキスが原因であったかどうかは定かではありませんが、検出されたプロベネシドの量がごく微量であったことなどから、ロバーツ選手は出場停止処分や記録の抹消といった処分は科せられませんでした。
*1: 2018年度禁止表国際基準において「S5.利尿薬および隠蔽薬」に指定。
*2:プロベネシド500mg、アモキシシリン500mg含有。国内流通なし。

ご家族の皆さんも危機感を
2018年4月、ロシアの女子テニスのE・コクリナ選手から利尿薬に当たる「フロセミド(Furosemide)」と「トラセミド(Torasemide)」が検出され、1年間の出場停止処分が科せられました。原因はむくみや腫れの改善目的で、母親からもらった薬を使用したことにあったようです。また2017年9月には、競馬の騎手である木幡育也騎手が、母親からもらった薬を同様の目的で使用したところ「フロセミド」が検出され、30日間の騎乗停止処分となってしまいました。
このように、近年親から子へ良かれと思い渡した薬が原因のうっかりドーピングが相次いでいます。熱心な応援は子供にとって非常に嬉しいものではありますが、良かれと思い無知なまま薬などを渡してしまうと、うっかりドーピングになってしまう可能性があります。
子供を守る立場であるからこそ、しっかりとした知識を身に付けていきましょう。

今までサプリメントや飲料等に利尿薬が混入していたといった報道は耳にしたことはありませんが、陽性事例が発生した場合、一般社団法人日本コンタクトレンズ協会が対応に追われたのと同様、メーカーも対応に追われることが容易に想像できます。
選手が使用する可能性のある製品を取り扱うメーカーは、事前に何かしらの対応をしておくことをお勧めします。