コラム

ドーピングの基本

ステロイドはなぜ禁止されるのか

筋肉増強作用のあるステロイドはドーピング検査において、度々検出される禁止物質の一つです。今回は、なぜステロイドはドーピングにおいて禁止されるかについて解説します。

ステロイドとは

ステロイドとは「ステロイドホルモン」のことであり、「副腎皮質ホルモン」と「性ホルモン」の2種類から構成されています。
副腎皮質ホルモンは医療現場においてよく耳にするステロイドで、「プレドニゾロン」等に代表されます。性ホルモンは男性ホルモンや女性ホルモンのことであり、この性ホルモンが度々、ドーピングのニュースで話題にのぼります。特にドーピングに用いられるのは、「テストステロン」等の男性ホルモンを元にした、スポーツで効果的な作用を出すように加工された物質です。
滋養強壮薬にはご注意を」のコラムでも書きましたが、性ホルモンは主に「間脳」と呼ばれるメーカーと、「精巣・卵巣」と呼ばれる工場、「ゴナドトロピン」と呼ばれるメール的な役割を果たすホルモン、の三者間で体内量がコントロールされています。
メーカーである間脳は体内に性ホルモンの量が少ないと感じると、工場である精巣・卵巣に向けメールであるゴナドトロピンを大量に送ります。精巣・卵巣はゴナドトロピンの量に依存して性ホルモンを作るため、ゴナドトロピンが大量に来るとその量に準じて性ホルモンを作りだします。すなわち、間脳が体内の性ホルモンの量を感知し、精巣・卵巣に向けたゴナドトロピンの量を調節することで、性ホルモンの体内量はコントロールされているのです。

なぜドーピングとして禁止されるのか

男性ホルモンであるテストステロンは、男性器の成長や精子を作り出す働きの他に「蛋白同化作用」、すなわち筋肉を増強する作用があります。ドーピング目的で使用した場合 、運動のパフォーマンス力の向上を図ることができる一方で、体に大きな負担をかける物質でもあります。例えば男性の場合、精子を作る力を低下させてしまうことが挙げられます。
筋肉注射等でテストステロンが体外から入ってくると、メーカーである間脳は体内の男性ホルモンの量が多いと感じ、ゴナドトロピンの量を減らします。結果的に“精子を作ってほしい”という指令が工場である精巣に届かなくなり、精子が作られなくなるという仕組みです。
女性の場合は、体毛の増加や声の高さが低くなる作用等があります。本来、数少ない男性ホルモンが体内に入ってくるため、いわゆる“男性化”してしまうのです。
ステロイドは長期間使用すればするほど、精子の減少や女性の男性化傾向が強くなるので注意しましょう。また、肝臓にも負担がかかり、深刻な病気を引き起こす可能性もあります。ステロイドは筋肉を増強させるイメージばかりが先行していますが、非常に危険な側面も持っています。競技の結果を残すことも大切ではありますが、健康や命に代えられるものはないということを忘れないでください。