コラム

ドーピングの基本

ドーピング違反になる時はどんな時?

ドーピング違反は禁止物質を摂取することだけではありません。今回は、ドーピング違反の定義と、当時話題となったドーピング違反事例についてご紹介します。

■禁止物質の使用・計画
ドーピング禁止物質を体内に入れることや、ドーピング違反を計画することは処罰の対象になります。計画が実行されたかどうかは重要ではなく、計画した行為自体が処罰の対象となることも忘れてはいけません。

<ランス・アームストロング氏の場合>
2012年、ツール・ド・フランスで、7回優勝経験のあるランス・アームストロング(Lance Armstrong)氏は過去にドーピングをしていたことを告白しました。ドーピング違反はプロサイクリングチーム内で組織的に行われていたようで、アスリートへの圧力もあったとされています。
また、ランス・アームストロング氏のドーピングを証言した一人でもある、チームメイトであるフランキー・アンドリュー(Frankie Andreu)氏も自身にドーピング禁止物質を注射していたと言います。
フランキー・アンドリュー氏はWADA(世界アンチ・ドーピング機関)との会談で以下の様に述べています。
「禁止薬物を手に取ったとき、そのときは、みんながやっていることに思えて、選択肢がありませんでした。結局、それはわたしの決断で、ノーと言えば家に帰らなければならず、イエスと言えばチームに留まるために禁止物質を使用することになりました。」
この証言からドーピングが組織的に行われていたことと、ドーピングをするようにアスリートに圧力があったことがわかります。
現在、フランキー・アンドリュー氏はドーピング活動の防止に貢献しています。

■検体の提出拒否
ドーピング検査実施の通知を受けた後、検査から逃げようとしてドーピング検査をする職員から逃げたり、検体の提出を拒否したりした場合はドーピング違反となります。

<タム・グエン氏の場合>
2017年7月、アメリカのミズーリ州で行われたウエイリフティングの大会で優勝したタム・グエン(Tam Nguyen)氏は、試合後のドーピング検査で検体の提出を拒否し、ドーピング違反となりました。これにより、記録の抹消と4年間の資格停止処分が科せられています。

■居場所報告義務違反
選手は遠征の滞在先等、自身の居場所を報告しない場合はドーピング違反となります。
検査対象者登録リストに登録された選手は、この先どこにいる予定なのかを、あらかじめ報告をする義務があるのです。居場所を適切に報告していない等、違反が12ヵ月間で合計3回になるとドーピング違反となり、12年間の資格停止処分を科せられる可能性があります。
なおオリンピックにおいては選手個人が、サッカー等の団体競技では所属チームが各々報告を行っています。

<リオ・ファーディナンド氏(個人)の場合>
2003年、2014年5月までサッカー・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドでプレーをしていたリオ・ファーディナンド(Rio Gavin Ferdinand)氏は、あらかじめ決まっていたドーピング検査場所に現れなかったためにドーピング違反となりました。これにより、2004年1月から8ヵ月間の出場停止処分を受け、UEFA EURO2006ではイングランド代表から外されることとなりました。

<マンチェスター・シティ(チーム)の場合>
2017年1月、サッカー・プレミアリーグのマンチェスター・シティは、チームの居場所の報告を適切に行わなかったため、イングランドサッカー協会よりドーピング違反を言い渡されました。同年月には、およそ500万円の罰金処分を命じられています。

■検査の妨害、隠ぺい
ドーピング検査の妨害や、虚偽の情報報告をした場合、ドーピング違反となります。
また、検査のために採取された尿や血液に、化学物質を入れることで検査結果に影響を与えることも禁止されています。

<ドリアン・アヌシュ氏の場合>
2004年のアテネオリンピックの男子ハンマー投げで金メダルを獲得した、ハンガリー代表のアドリアン・アヌシュ(Adrián Annus)氏は、ドーピング検査時に尿をすり替える隠ぺい工作を行いました。
検査中のアヌシュ氏の行動に異変を感じたIOC(国際オリンピック委員会)が大会後、アヌシュ氏に再検査を依頼したところ、これを拒否しました。その後の調査により隠ぺい工作が判明し、アヌシュ氏はオリンピックから永久追放され、代わりに室伏広治氏に金メダルが授与されました。

■禁止物質の保有
親戚や友人に渡すことが目的だとしても、競技会場内において禁止物質を持ち込むとドーピング違反となります。ただし、一部の禁止物質においては、競技会場外であれば選手による使用が許されているものもあります。また、事前に申告をしていれば処罰の対象にならないこともあります。

<ウェイン・オデスニク氏の場合>
2010年5月、ITF(国際テニス連盟)はアメリカのテニスプレイヤーであるウェイン・オデスニク(Wayne Odesnik)氏のドーピング違反を報告しました。オデスニク氏は、2009年12月にアメリカで「ヒト成長ホルモン」を入手し、翌年1月にオーストラリアに持ち込んだところ、オーストラリアの税関職員によって発見されたようです。
オデスニク氏は、再発する怪我の治療のために専門家の助言を得て購入し、治療を第一優先に使用すると主張したものの、治療目的で使用することを事前に申請しなかったため、禁止物質を所持していたことでドーピング違反となり、2年間の資格停止処分が科せられました。
オデスニク氏は復帰後の2015年にも禁止物質の使用が判明し、2度目のドーピング違反となりました。その後、15年間の資格停止処分が科せられました。

■サポートスタッフによる関与
サポートスタッフが選手に対して禁止物質を投与した場合、サポートスタッフもドーピング違反の対象です。また、資格停止処分を科せられているサポートスタッフに、選手が接触しても、選手がドーピング違反に科せられる可能性があります。

<アレクセイ・メルニコフの場合>
2017年4月、ロシア陸上競技の元コーチであるアレクセイ・メルニコフ(Alexei Melnikov)氏が、国家ぐるみのドーピングに関与していたことが発覚し、永久資格停止処分を科せられました。
また、元コーチだったウラジミール・カザリン(Vladimir Kazarin)氏も関与していたことが判明し、同様の処分となりました。