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ルイス・ネリ選手から検出されたジルパテロールとは

山中慎介選手を破ったメキシコのルイス・ネリ(Luis Nery)選手から検出されたことで話題となった「ジルパテロール(Zilpaterol)」。今回はジルパテロールとは何かについて解説します。

■ジルパテロールの作用と危険性
ジルパテロールは筋肉を増強させる「蛋白同化作用」や、気管支を拡げ呼吸を楽にする「気管支拡張作用」がある物質です。ジルパテロールを牛に摂取させると、蛋白同化作用により脂肪分が減り、赤身の増えた硬い触感の肉質となるため、メキシコやアメリカ等、国外において肉質の改善を目的に使用されることでも有名な物質と言えます。
また、人に使用した場合は筋肉量の増加や、競技中の呼吸が楽になるといった効果がみられる可能性があるものの、肝臓や心臓に大きな負荷をかけ、肝不全や不整脈等、重大な病気を引き起こす可能性があります。こういった背景等から、WADA(世界・アンチドーピング機構)の公開する2017年禁止表国際基準の「S1.蛋白同化薬」において、アスリートの使用が常に禁止されています。

■過去に生じた、食肉汚染による陽性事例
ジルパテロール同様に、肉質改善として使用される物質として、「クレンブテロール(Clenbuterol)」と「ゼラノール(Zeranol)」が挙げられます。これらの物質も度々、ドーピング違反として報告されています。

<クレンブテロールの陽性事例>
2017年2月、アメリカの陸上選手であるフェルナンド・カバダ(Fernando Cabada)選手の検体から、クレンブテロールが検出されたという報道がありました。
原因はアメリカ産の食肉にクレンブテロールが混入していたことのようです。しかし、検出された量がごく微量であったことや、クレンブテロールの食肉汚染に関しWADAが警告していたのは、アメリカ産の食肉ではなく、中国産やメキシコ産の食肉であったこと等から、同選手は処分を科せられませんでした。

<ゼラノールの陽性事例>
2017年6月、アメリカの陸上選手であるアジー・ウィルソン(Ajee Wilson)選手の検体から、ゼラノールが検出される報道がありました。
検出された原因については明らかになっていませんが、食肉汚染の可能性が高いと言われています。しかし、検出された量がごく微量であったことや、同選手が提出した食生活の記録等から、ゼラノールの摂取は防ぎきれなかったことが立証され、記録の抹消のみの処分となりました。

いくらドーピングにならないよう注意を払っていたとしても、食事に含まれる可能性のある禁止物質については、防ぐことが難しいのが現状です。海外遠征に行った際には、明らかに色や臭いの変な肉を食べないようにする、食事の記録を毎回付ける等の対策をとり、自身の身を守る工夫をしましょう。