コラム

ドーピングニュース

一体何もの?スポーツファーマシストとは

先日、2020年東京オリンピック・パラリンピックの薬剤師の募集要項があまりにもブラックであると、web上で話題になりました。

応募要件としては、「スポーツファーマシストの資格を持っていること」「英語で患者対応(服薬指導)ができること」、「病院経験がある方が望ましい」等が規定されており、
診療時間16時間(救急サービスは24時間)で3交代制、無報酬といった内容でした。

募集をかけた日本薬剤師会は、あくまで「非公式的な調査」とコメントしているようですが、あまりにもひどいと多くの非難を受けています。
さて、この募集要項を見て疑問に思うのが、「スポーツファーマシスト」というあまり聞きなれない資格についてではないかと思います。今回はスポーツファーマシストについて解説していきます。

スポーツファーマシストとは?
スポーツファーマシストとは、JADA(日本アンチ・ドーピング機構)より認定されたドーピング防止を目的とした専門の薬剤師のことで、ドーピングのニュースが国内でも多く報道されるようになった今、重要な資格として注目を集めています。
2009年に始まった本制度の資格取得者は、2017年4月現在で7,894名となりました。

スポーツファーマシストになるためには
スポーツファーマシストは、毎年4月にあるJADAの募集に応募し、その年の夏と冬に行われる講習を受け、テストに合格すれば年齢関係なく取得できます。
しかし、スポーツファーマシストの資格を取得できたからといって、すぐにアスリートからの相談に対応できるようになるかというと、そうではありません。
禁止物質がドーピングの禁止表(禁止表国際基準)に明記されているものだけでも250種類以上あったり、禁止表上で曖昧な表現となっている禁止物質も多かったりと薬剤師であっても全ての物質を把握するのは困難です。更にドーピング自体のルールも非常に難しく、テストを合格しただけの知識では対応しきれない相談も少なくありません。
また、禁止表は毎年1回、リストの中身が改定されるほか、禁止方法等のルールが変更されることもあるので、常に最新の情報を取り入れていく努力も必要となります。

■スポーツファーマシストはどんな仕事をしているのか?
スポーツファーマシストの主な活動例は以下です。

・医薬品の適正使用とアンチ・ドーピングに関する情報提供
・学校教育の現場におけるアンチ・ドーピング情報を介した医薬品の使用に関する情報提供
・地域におけるスポーツファーマシストの存在とアンチ・ドーピング活動の周知
・国民体育大会に向けての都道府県選手団への情報提供・啓発活動
(出典:スポーツファーマシストHP、公認スポーツファーマシスト認定制度概要

スポーツファーマシストというと、多くの人からスポーツチームやオリンピック・パラリンピック等の大会に帯同しているイメージを持たれますが、そういった活動をしているのはほんの一部です。
スポーツファーマシストの大半は、調剤薬局やドラッグストア、病院等で薬剤師として働きながら、アスリートから相談があった場合に対応する他、要望があった時に学校等に出向き、啓蒙活動を行っています。

7,894名は、全国のどこにいるのか?
遠征先で体調を崩してしまい、いざ相談しようとしてもどこにいるのか分からないと言った時に役立つのが、スポーツファーマシストのHPにある「スポーツファーマシスト検索」です。エリア、住所、勤務先、競技等の条件から、スポーツファーマシストを検索することができます。
7,894名すべてが登録している訳ではないうえ、アピール欄が小さいため各スポーツファーマシストの違いがよく分からない仕様になっていますが、現時点では一番多くのスポーツファーマシストが登録しているサイトであるため、薬の使用に困った時は大きな力になるでしょう。

相談する際に押さえておくべきポイントは?
スポーツファーマシストにドーピングについて相談する際は、単に医薬品にドーピング禁止物質が含まれるかどうかだけ聞いても、有意義な情報が帰ってくるとは限りません。なぜならば、ドーピングの禁止表は、常に禁止されるものから競技時のみに禁止されるもの、更には特定の競技のみに禁止されるもの等があり、事前に競技団体等を伝えておかないと、本来服用していいものが服用できなかったりして、必要以上にコンディション回復までに時間を要してしまう可能性があるからです。

以下に相談する際の最低限の5つのポイントを記載します。

・競技団体
・性別
・検査対象可能性日
・医薬品名
・いつからいつまで服用したのか

医薬品はカタカナ1つ違うだけで作用が大きく変わります。もしも現物を手に持っていて、スポーツファーマシストが近くにいる場合には、面倒かもしれませんが直接現物を持っていき、相談するのをお勧めします。

スポーツファーマシストに相談できることとしては、医薬品がドーピング違反に該当する物質なのかどうか以外にも、どういった風邪薬がパフォーマンスを下げずに済むか等といった相談も行うことが可能です。
専属のスポーツファーマシストを見つけるためにも、まずは自分と同じ競技のスポーツファーマシストを探すところから始めてみて、風邪薬や痛み止め等の常備薬について相談してみるのはいかがでしょうか。