コラム

ドーピングの基本

喘息治療薬によるドーピング

「喘息の治療薬には十分注意をしてください」アスリートであれば、こういった指導を一度は受けたことがあるのではないでしょうか。これは喘息の治療にドーピング禁止物質である「ベータ2作用薬」が用いられるからです。では、ベータ2作用薬とは一体どんな物質なのでしょうか?

■ベータ2作用薬とは
ベータ2作用薬とは、「アドレナリンベータ2受容体」という薬やホルモン等からの情報を受け取る器官に、情報を与える物質群のことを表します。ベータ2作用薬は主に、気管支と心臓に存在するアドレナリンベータ2受容体に働きかけ、気管支を拡げて呼吸を楽にしたり、心臓の鼓動を速くしたりします。そのためベータ2作用薬は、気管支喘息の治療や心臓の鼓動が遅い人の治療に用いられます。一方、心臓の鼓動に問題がない人に使用してしまうと、心臓のリズムがおかしくなり、不整脈等を起こしてしまう可能性があります。
なお普段からハードトレーニングをして、心臓を酷使しているアスリートがベータ2作用薬を使用してしまうと、心臓に余分な負荷がかかるため危険です。

■ベータ2作用薬による陽性事例
アドレナリンベータ2受容体に情報を与える物質の総称「ベータ2作用薬」には、サルブタモール、サルメテロール、ツロブテロール、フェノテロール、プロカテロール、ホルモテロール、ヒゲナミン、テルブタリン等多くの種類が存在します。
最後に、この中で過去選手から検出されたベータ2作用薬についてご紹介します。

<ヒゲナミン>
ヒゲナミン(Higenamine)は、ハーブや生薬といった天然の物質に含まれる成分であり、天然由来由来のサプリメントに混入する可能性のある物質です。
2017年9月現在、日本国内においてヒゲナミンがサプリメントに混入していたとの報告はありませんが、同年8月、アメリカの重量挙げ選手であるのカール・アゼベド・フラー(Carlee Acevedo-Fuller)選手の使用していたサプリメントにヒゲナミンが混入しており、それが原因で9ヶ月間の資格停止処分が科せられたという報告はあります。
アスリートの方々は100%天然成分由来のサプリメントにも、ヒゲナミンの様な禁止物質が含まれる可能性があることを知っておくといいでしょう。

<テルブタリン、ツロブテロール>
2016年4月、イギリスの自転車競技選手であるサイモン・イエーツ(Simon Yates)選手の検体からはテルブタリンが、2015年2月には日本のバレーボール選手の検体からツロブテロールが検出されています。
両選手とも喘息の治療を目的に使用していたようですが、医療スタッフとの連係ミスで事前申請が漏れたことから、ドーピング違反になってしまったようです。

喘息の治療に用いられる医薬品全てが禁止されているのではなく、一部のベータ2作動薬や吸入ステロイドの使用は認められています。
喘息の治療薬は、使用する前にスポーツドクター、もしくはスポーツファマシストに相談するよう心がけましょう。