コラム

ドーピングの基本

アンチ・ドーピングの第三者認証を取得した化粧品を使うメリットって?

昨今、健康食品やサプリメントに混入した禁止物質によるドーピング違反を防ぐために、アンチ・ドーピングの第三者認証を取得する商品が増えてきました。

2016年には唇の日焼け止め用のリップクリームに禁止物質が混入し、出場停止になるという事例があったことから、日焼け止めなどの化粧品分野でも第三者認証を取得する製品がでてきており、ドーピング検査の対象になるようなアスリートの方にとっては強い味方となっています。
関連記事:サプリメントからリップクリームまで。 2016年のステロイドによるドーピング違反事例

では、趣味でスポーツを楽しむ方や一般の方にとって、アンチ・ドーピングの第三者認証を取得した化粧品を使うことは、どのようなメリットがあるのでしょうか。

「化粧品」にもかかわらず医薬品成分が混入している製品が出回っている

化粧品は、医薬品医療機器等法の「化粧品基準」(平成12年厚生省告示第331号)により、配合禁止成分(使用してはならない成分)と配合制限成分(化粧品の使用方法に応じて使用できる上限が定められた成分)および配合許可成分が決められており、製品に全ての配合成分を表示することが義務付けられています。そして、医薬品の成分(添加剤としてのみ使用される成分および別表に掲げる一部成分を除く)は原則配合することはできません。

しかし、厚生労働省のホームページにも7製品ほど例示されていますが、これまで化粧品の外用剤にプロピオン酸クロベタゾールや吉草酸ベタメタゾンといった医薬品成分である副腎皮質ステロイドが検出され、自主回収になったものもあります。

これら副腎皮質ステロイドは、世界アンチ・ドーピング規定の禁止表国際基準 ”S9. 糖質コルチコイド” に該当するため注意が必要ですが、肌への塗布での使用に関しては禁止されてはいません。ただし、副腎皮質ステロイドの外用薬は皮膚の血管を収縮させるため最初は肌が白くなるものの、何ヶ月も連続して使用していると肌が薄くなったり、本来毛深くない塗布部分が毛深くなったり、毛細血管がもろくなり拡張してくるといった副作用が起きる可能性があります。

一般的に化粧品に混入する副腎皮質ステロイドは医薬品に比べ少量であり、重篤な副作用が出ることは無いと思われますが、2008年に報告された化粧品クリームでは「ステロイド不使用、副作用なし」と謳われているにもかかわらず、医薬品とほぼ同量にあたる0.047%のプロピオン酸クロベタゾールが検出され、実際に健康被害が生じたケースもあります。そして、今年5月、米国食品医薬品局(FDA)より「市販の日焼け止めに配合される紫外線防御剤が、皮膚から体内に吸収されている」という内容の臨床試験結果が発表されています。
参照:Murali K. et al., JAMA. Published online May 6, 2019. doi:10.1001/jama.2019.5586

この臨床試験だけでは人体への影響の有無は特定できませんが、今後、日焼け止めをはじめとした化粧品の配合成分など、品質に対するチェックの目が厳しくなる可能性は十分にあると思われます。

アンチ・ドーピング第三者認証は、一般の方においても「安全な化粧品」選びの指標になる

日焼け止めなどを含めた化粧品は、実際に肌に塗ることが多いため「より安全な製品を使いたい」と考える方も多いでしょう。

ここでいう「安全性」とは、アスリートにとっては”ドーピングに引っ掛からない”ということが前提に来るかもしれませんが、一般の方にとってはただ安全な良い成分を使っていることにとどまらず、製造工程から使い方に至るまで、自身の肌に対してトラブルを起こすことなく美の目的を達成する全てのプロセスにわたる問題です。

先にも出てきたような、故意であるか否かに関わらず、副腎皮質ステロイドなどの医薬品成分が混入した製品を使うことは著しくその安全性を損ないます。医薬品成分は適切な治療目的で適切な使い方をしていれば良いですが、基本的には「薬は人体に対しては異物」ですので、適切な使い方をしないと人体に対して何かしらの被害を及ぼす可能性があります。

以上のことから、第三者認証を取得した化粧品は「安全な化粧品」を保証するひとつの大事な指標となります。自分はアスリートではないから関係ないというのでなく、一般の方にとっては、健康被害に合わないための重要な指標なのです。

現在、アンチ・ドーピングのための第三者認証制度は弊社を含めて複数存在します。基本的には、2019年4月に日本アンチ・ドーピング機構(JADA)より発表された「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン」に沿った認証制度を取得した製品を使用することが望ましいと考えられます。*1)

ドーピング・ガードでは、前述の「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン」でも求められているように、0.1 ppmという高度な分析の下限値を設け、国内トップクラスの分析機関による検査を行っています。また、ドーピング禁止物質は一部を除き、多くが医薬品成分ですが、ドーピング・ガードでは副腎皮質ステロイドをはじめとする国内流通する可能性が高い品目を一斉に分析しています。

この機会に、アスリートではない一般の方も、アンチドーピングのための第三者認証に理解を深めていただき、化粧品選びのヒントにしてみてください。
*1)ガイドラインに沿った運用は2019年夏に完了予定です