コラム

インタビュー

ドーピング検査のボランティアスタッフに聞く、ドーピング検査のHOW TO!

選手がドーピング検査にあたるとどんなことが行われるのでしょうか?今回はドーピング検査のボランティアを行ったことのあるフィジカルトレーナーの酒井さんにドーピング検査の体験談についてお話しいただきました。

【基礎知識1】ドーピング検査の方法

ドーピング検査の方法は全世界、すべてのスポーツで同じ手順で行われます。ドーピング検査の方法は「尿検査」と「血液検査」があり、競技によってそのどちらかの検査が行われます。また、ドーピング検査は「競技会検査」と「競技会外検査」があり、ドーピング検査によって採取された検体は、世界アンチードーピング機構(WADA)公認の分析機関で分析が行われます。もし、ドーピング検査の検査通告を受けたものの、指定された日に用事等があり、検査が受けられない場合は、「検査拒否」と見なされてアンチ・ドーピング規則違反となります。

【基礎知識2】尿検査の手順

1:通告・移動:本人確認の上、検査に関する説明受け、通告書に署名を行います。その後検査室に移動します。

2:採尿カップの選定:アスリート自身で採尿カップを1つだけ選びます。採尿カップやキャップに破損や汚れがないか確認します。(検体採尿の前には水道水で手を洗います。)

3:尿検体の摂取:同性のDCO(ドーピング・コントロール・オフィーサー)立会いの元、採尿(90ml以上)を行います。採取後、採尿カップはすぐにキャップを閉め、DCOから見える位置で持ちながら作業室に移動します。

4:検体封印作業:アスリート自身でサンプルキット(尿検体を入れるボトル)を1つだけ選び、DCOの指示の元、尿検体をBボトルとAボトルに注ぎ、しっかりとキャップを閉めます。

5:書類作成・控えの受け取り:検査日から7日前に使用した薬、サプリメントを申告します。そして個人情報、サンプルキッド番号などに間違いがないか確認し、署名を行います。検査書類のコピーを受け取ったら検査終了です。ドーピング検査の詳しい手順や注意点はJADAのドーピング検査ガイドをご覧ください。

ドーピング検査のボランティアスタッフ酒井さんの体験

-留学先のカナダでWBSCのドーピング検査のボランティアに応募した動機を教えてください。

酒井トレーナー
主な動機はメディカルスタッフとしての経験を積みたかったからです。私はトレーナーとして日々、選手のフィジカル面のサポートをしているのですが、日本だとどうしてもメディカル面のサポートだと医療職の資格が必要だったりするので、なかなか実践の場をつめなかったりするんですよね。こう話すとメディカル面のサポートをしたいと思われそうですが、そういうことではなくて、あくまでもスタッフとして現場経験を積みたい、フィジカル面だけではない様々な知識を蓄えたいということです。ドーピングに関して言えば、大きな大会ほどドーピングについて聞かれることが多いのですが、「専門外だからわからない」なんてことは言いたくないので、きちんと回答できるように日々勉強しています。少し前に、剣道のカナダ代表選手の世界大会にサブトレーナーとして帯同したのですが、メイントレーナーとドーピングについて話す機会がありました。風邪薬の使用可否に関することや、栄養ドリンクの成分についてなどだったのですが、ドーピングに関する知識を蓄えておいてよかったと思う瞬間でした。

-ボランティアスタッフとしてどんなことをしましたか?

酒井トレーナー
会場にはDCO(ドーピング・コントロール・オフィサー)の資格を持った人が一人おり、彼の指示の元、ドーピング検査のサポートを行いました。まず私たちスタッフは2人1組になり、自分たちが担当する選手を試合中から試合後まで、何かおかしなことはしていないか、怪我などをしてどこかに行ってしまわないかなどを確認するところから始まります。試合が終わったら、選手のいるベンチへ行き、尿によるドーピング検査を実施する旨を話して水を1本渡します。その後、ボランティアスタッフと、チームマネジャー、選手の4人でDCOの待つDCOルームまで移動します。今回、私は日本人選手の通訳という立場でもあったので、DCO、選手、チームマネジャーと共に席につきました。そこでは名前、病気のヒアリングなどが行われました。ヒアリングが終わると、DCOと選手はトイレで尿検査を行うのですが、ボランティアスタッフとチームマネジャーはその場で待機となります。ちなみにこの大会ではドーピング検査を合計7回ほど担当したのですが、早い人で5分、遅い人でも1時間で尿が出ていました。

-担当する選手はどう選ばれるのですか?

酒井トレーナー
完全にランダムに選ばれます。くじ引きのような形で引き当てた数字に該当する背番号を持つ選手を担当する形になります。ほとんどの選手が初めて検査を受けるようで、緊張半分、興奮?半分のような印象でした。ちなみに私の肌感では、メジャースポーツほど、球団からのサポートが厚いからか、個人レベルでのドーピングの意識が低いような気がしましたね。 一方、自転車などの個人競技や、マイナースポーツほど個人レベルのドーピングの意識が高いと思います。サポートスタッフが限られているからゆえに自身で調べる必要があるからだと思いますけどね。

-ドーピング検査のサポートをした感想を教えてください。

酒井トレーナー
ドーピング検査の事前研修の時には、医療用語が多かったこともあり、わからないこともあったのですが、実際に始まってみたら困るようなことは全くありませんでした。というのも開会式の前日に事前練習があるのですが、その事前練習の後にドーピング検査のデモンストレーションを行う機会があったのでそこで不安が払拭されましたね。ちなみにデモンストレーションとはいえ、その検査も正式なドーピング検査としてカウントされるんですよ。それは少し驚きました。そして、ドーピング検査は全て英語で行われるのですが、日本人の中には本当に簡単な英語がわからない人も結構いるんですよね。だからこそ私のような通訳が必要になるのだと思うのですが。後々のトラブルにならないためにも、例えば記入用紙は日本語訳をつけるなどの工夫はあっても良いような気がしました。

-ドーピング検査の内情を知れて勉強になりました!ありがとうございました。

プロフィール:フィジカルトレーナー 酒井竜矢(さかい たつや)

スペインプロサッカークラブ エスパニョールでの活動、
U-18世界野球帯同、カナダ剣道代表アシスタントトレーナー、
自転車競技 国体選手トレーニング指導、マウンテンバイク全日本選手権帯同、
大学野球部 トレーナー、プロ野球選手 トレーニング指導など野球を中心にトレーナーとして活動し、日本やカナダでトレーニング、コンディショニングを行なっている。