コラム

ドーピングの基本

ドーピング違反にならない!?監視プログラムとは

WADAが発行している禁止表国際基準の中には「監視プログラム」という項目があります。今回は「監視プログラム」とは何かについて解説していきます。

監視プログラムとは

禁止表国際基準にある監視プログラムとは、薬物摂取の濫用パターンを把握するために規定された項目です。このプログラムで挙げられている成分については、分析こそ行うものの、万一検出されたとしても失格になることはありません。
本プログラムに記載されている成分により、意図的なドーピングが広く行われていると疑われる場合は、通常の禁止成分として規定が検討されます。つまり、禁止物質として規定される可能性が非常に高い項目と言えます。監視プログラム内にある成分は、禁止物質に規定されている成分同様に体への負担が心配される成分です。ドーピング違反はもとより、健康の面でも注意すべき成分として理解しておきましょう。

監視プログラムから禁止物質へ。その逆の動きもある

禁止表国際基準2015の監視プログラムには、メルドニウム(meldonium)が規定されていました。その後、メルドニウムは心臓を強くする可能性があることから、持久力を高める目的で使用する例が散見されるようになりました。こういった背景により、2016年の禁止表国際基準においては通常の禁止物質の項目に規定されることになりました。
一方、禁止物質として規定されているものの、スポーツにおいて濫用される心配がないと判断された成分は監視プログラムに移行する場合があります。例えば、カフェインは2003年までは禁止物質として規定されていましたが、その後2018年現在までは監視プログラムの一つとして規定されています。

ブプロピオン、カフェイン、ニコチン、フェニレフリン、フェニルプロパノールア ミン、ピプラドール、シネフリン:これらの物質は 2018 年監視プログラムに含まれ、 禁止物質とみなさない。(WADA 「2018年禁止表国際基準」S6.興奮薬より抜粋)

知らなかったでは済まされない

2016年、テニスのマリア・シャラポワ選手の検体からメルドニウムが検出されたことは記憶に新しい方がいるかもしれません。彼女は発覚後、記者会見で、持病である心臓疾患のために10年前から服用していた薬が原因であることを話しました。また、メルドニウムが監視プログラムから禁止物質に移行したことについて、ついて知らなかったという主張もしています。
通常、持病のために服用する薬がある場合は、「治療目的仕様に係わる除外措置(TUE: Therapeutic Use Exemption)」という申請を行います。申請が承認されるにはいくつかの条件がありますが、申請が通れば禁止物質として指定されているものでも摂取できます。いち、スポーツファンとしてはTUEの申請はしていたのか、ドーピング違反にならないように彼女に助言する人はいなかったのかについては気になる点です。その後、彼女は2年間の資格停止処分が科せられたものの、CASへの提訴により1年3ヵ月の資格停止処分となっています。
当初から比較すると、資格停止期間は大きく短縮される結果となりましたが、選手にとって資格停止期間は大きな痛手であることは変わりありません。知らなかったでは済まされないのがドーピングのルールです。彼女のようなケースが二度と起こらないためにも、毎年1回更新される禁止表国際基準はきちんと確認する必要があります。

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