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原因は??胃腸薬にドーピング禁止物質が混入!?

2019年3月4日、胃炎・胃潰瘍治療薬であるエカベトNa顆粒66.7%「サワイ」からドーピング禁止物質であるアセタゾラミドが検出されたことにより、販売元である沢井製薬は製品の使用中止と自主回収を発表しました。
同剤を服用したレスリング選手がドーピング検査で陽性となり、同剤の成分分析をした結果、本来禁止物質が含まれていない医薬品にドーピング禁止物質が混入していたことが発覚したため大きな話題を呼んでいます。
(参照:エカベト Na 顆粒 66.7%「サワイ」使用中止と回収のお知らせ)

医薬品はどのようにして選手の手元に届くか?医薬品の製造工程

医薬品には、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、注射剤など、さまざまな剤型あり、それぞれの剤型によって製造工程が異なります。
エカベトNa顆粒66.7%「サワイ」の剤型は顆粒剤であることを考えると、以下の順序を経て選手の手元に医薬品が届いたと考えられます。

1.原薬受け入れ試験・・・原薬の品質評価を実施
2.顆粒剤を製造・・・製造工程は図1参照
3.品質管理・・・工場における原料の受け入れ、中間検査、出荷前の最終製品、出荷までの全ての工程においてGMPに基づき製品の品質管理を実施
4.出荷・・・医薬品を市場に出す
5.流通・・・卸、販売会社に医薬品を届ける
6.品質保証・・・自社工場や協力工場の医薬品が国の承認基準に適合しているかをGQPに基づいて監査し、品質改善指導を実施
7.薬局、病院等医療機関に医薬品が届く・・・医療関係者にMRが情報提供を実施
8.選手に医薬品が届く・・・医師、薬剤師を通じて情報提供を実施
(参照:沢井製薬生産、情報提供工程)

医薬品に他の成分がコンタミネーションすることはあり得るのか!?

コンタミネーションが起こるケース

今回、沢井製薬は「弊社は原薬メーカーの製造段階で混入したのではないかと考え、調査しております。」と発表しています。
つまりコンタミネーションの可能性があるとの見解をして示しているのです。
医薬品に他の成分がコンタミネーションするケースとして以下の3つが挙げられます。なおこのケースはサプリメントでも同様のことが言えます。

1 原薬受け入れ試験の段階で原薬、賦形剤等にコンタミ
2 顆粒剤製造の各工程で工場内、機械の清掃、洗浄不備によるコンタミ
3 品質管理から選手に医薬品が届くまでの工程で第三者による意図的コンタミ=パラドーピング

沢井製薬は、品質管理や品質保証に関してはGMP、GQPに基づいて行なっているため2のケースだとは考えておらず、1のケースを原因として考えているということです。現状、原因としてはどのケースも可能性が0とは言えないため今後の動向に注目です。

禁止物質が含まれていない医薬品にドーピング禁止物質が含まれていたケースは日本では今回が初めてですが、海外ではこういった事例は実はあります。
医薬品のコンタミネーションに関する論文によると、試合の前に選手が使用していた非ステロイド性抗炎症薬からドーピング禁止物質であるヒドロクロロチアジドが検出されたと報告されています。非ステロイド性抗炎症薬は本来ドーピング禁止物質が含まれていない医薬品のため、ヒドロクロロチアジドによる非ステロイド性抗炎症薬へのコンタミネーションによるものとされています。

選手・選手関係者は今後どう対策をしていけばいいのか?

今回のような陽性事例を100%防ぐことは正直難しいです。しかし、今後このような陽性事例が起こりうるリスクを軽減することはできます。選手は、お薬手帳やメモを活用して使用した医薬品、サプリメントに関する証明記録をとっておくこと、専門家に相談すること、医薬品に頼らない健康状態を作ることが大切です。健康状態を作るためには睡眠、食事、運動がとても大事なのでトレーナーや栄養士の存在もドーピングのリスクを軽減するためには大切になります。

一方、選手関係者は選手から違反の連絡を受けた際の対応をしっかり行うこと(アスリートからドーピング違反の連絡を受けた時の対処方法とは)、証明するために使用した医薬品、サプリメントの管理や第三者認証の対策をすることが大切になります。

ドーピングの検査技術が向上してきている時代です。選手、選手関係者は今回の出来事を機に今一度ドーピングの対策について考え直すべきではないでしょうか。

参考文献
第十七改正日本薬局方

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