コラム

ドーピングの基本

大麻・麻薬によるドーピングがアスリートにもたらす影響

このところ、元ボクシング選手のマイク・タイソン氏ら150人以上の現役選手と引退した選手が、WADA(世界反ドーピング機関)に対し、大麻を禁止薬物リストから除外するよう求め、嘆願書に署名したことが話題になっています。言うまでもないことですが、大麻や麻薬は、スポーツにおいても禁止されています。ではなぜ禁止されているのでしょうか?麻薬や大麻使用の危険性と共に解説していきます。

麻薬、大麻が禁止されている理由

世界アンチ・ドーピング規定の基本原理では、スポーツの価値について以下の項目を公表しています。

  • 倫理観、フェアプレーと誠意
  • 健康
  • 卓越した競技能力
  • 人格と教育
  • 楽しみと喜び
  • チームワーク
  • 献身と真摯な取り組み
  • 規則・法を尊重する姿勢
  • 自分自身とその他の参加者を尊重する姿勢
  • 勇気
  • 共同体意識と連帯意識

麻薬や大麻の使用は、上記の基本原理で公表されているスポーツの価値に反し社会性の問題があることが、ドーピングで禁止されている一番の理由です。ドーピングの基準において麻薬や大麻の使用による薬の作用も問題ですが、社会性の問題は、スポーツの精神に根本的に反しているため、スポーツに最も適切でない禁止物質といっても過言ではありません。

スポーツは、競技としてだけでなく体育等、学校の授業でも導入しているように教育の側面もあります。教育の点からも麻薬や大麻の使用は薬物乱用にあたるため、社会性の問題があり、適切ではありません。

麻薬・大麻の使用が選手にもたらす影響

麻薬や大麻の使用は選手の身体に危険な影響を及ぼすため、使用するリスクを理解しておくことが大切です。選手は、麻薬や大麻を使用することで以下の影響を受けます。

中枢神経系を抑制する麻薬(ヘロイン・モルヒネ等)

  • 痛覚の低下、縮瞳、便秘、呼吸抑制、血圧低下

中枢神経系を興奮する麻薬(コカイン、合成麻薬)

  • 瞳孔散大、血圧上昇、興奮、不眠、食欲低下

中枢神経系を抑制する大麻(マリファナ、ハシッシ等)

  • 眼球充血、感覚の混乱、情動の変化

選手にとって特に麻薬使用による興奮作用は、痛覚の低下を引き起こし、体の正常反応である痛みを脳が無視することで、選手にとっては怪我に結びつくリスクが高くなります。また、正常な感覚でトーレニングができないため、怪我をしている選手にとっては、リハビリの期間も長引きます。また、麻薬や大麻には、1度使用すると薬物の摂取をやめても、離脱による身体症状である身体依存と、感情や動機的な精神症状である精神依存が引き起こされ薬物依存に陥る危険性もあります。
参照:薬物依存(麻薬,覚せい剤,向精神薬,アルコール等)内閣府

大麻の成分による過去のドーピング違反事例

2017年12月7日に自転車競技のJay Henderson選手からドーピング禁止物質であるカルボキシ-テトラヒドロカンナビノール(THC)が検出されたことがわかりました。カルボキシ-テトラヒドロカンナビノール(THC)は、大麻の成分です。同選手は、競技成績の失効と最終的に資格停止処分3ヶ月間が科せられました。
参照:U.S. Cycling Athlete Jay Henderson Accepts Sanction for Anti-Doping Rule Violation USADA

THCは禁止物質だが、CBDは禁止物質ではない!?

大麻草の中には、カンナビノイドという成分が含まれています。カンナビノイドは、生理活性物質の総称で104種類あります。カンナビノイドのうちテトラヒドロカンナビノール(以下、THC)と精神作用のないカンナビジオール(以下、CBD)は大麻の主成分にあたる物質です。

基本的には、カンナビノイド自体はドーピング禁止成分ではありますが、2018年にCBDが禁止リストから除外されました。しかし、一部のCBDオイルの製品からドーピング禁止成分であるTHCが検出されたという報告もあり、CBDの製品だからといって安易に使用するのは危険だと考えられます。CBD製品を手にする際は、アンチドーピングの認証を取得している製品なのかはもちろんのこと、THC成分が混入していないものなのか、選手のみなさんは製品を販売している企業に使用する際は必ず確認してください。
参照:人気高まるCBDヘンプオイルからTHC検出、厚労省「大麻取締法該当のおそれ」 健康産業新聞

競技人生を台無しにしないために

麻薬や大麻使用によって引き起こされる身体依存や精神依存は、生活態度の乱れによるパフォーマンス低下、薬物依存による就業困難でセカンドキャリアに影響等、選手の人生に関わってきます。そのため、麻薬や大麻の使用はドーピングという問題だけでなく、社会や選手の身体に及ぼす影響が大きく、人生を台無しにする薬物になります。選手にとって麻薬、大麻の使用はリスクしかありません。選手のみなさんは、安易な好奇心や周りの人からの誘いで麻薬や大麻を使用することを控えましょう。