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平成29年度ドーピング違反事例

今回は、平成29年度にJADA(日本アンチ・ドーピング機構)のアンチ・ドーピング規律パネル決定(ドーピング違反事例)で判明したドーピング物質を対象に、ドーピングが起きた原因についてご紹介します。

平成29年度に国内で報告されたドーピング違反事例を見ると、蛋白同化薬2件、興奮薬2件、糖質コルチコイド2件、ベータ2作用薬1件、パラ・ドーピング1件が報告されています。

(出展:平成29年度_アンチ・ドーピング規律パネル決定報告一覧

  1. メテノロン,メタンジエノン(S1蛋白同化薬)

ケース1

2018年6月26日に全日本実業団対抗女子駅伝のドーピング検査で、優勝したユニバーサルエンターテインメントの中村萌乃元選手から筋肉増強効果がある禁止物質メテノロン(metenolone)が検出されたことがわかりました。同選手は、1年3ヶ月の資格停止処分、同駅伝でのチームの優勝取り消し、個人成績失効処分が科せられました。検出された原因は、婦人科系疾患治療のため手術を受け、その後に使用した注射とされています。

ケース2

2017年12月13日にカヌーの小松正治選手から筋肉増強効果がある禁止物質メタンジエノン(metandienone)が検出されたことがわかりました。同選手は、競技成績の失効が科せられました。検出された原因は、小松選手のライバル選手である鈴木康大選手によるドリンクへの禁止薬物混入とされています。

これはいわゆる、パラ・ドーピングと呼ばれるものです。パラ・ドーピングとはライバル選手などへ、妨害やドーピング禁止物質などを混入させ、相手選手を落とし入れる行為を指します。

  1. メチルエフェドリン,1,3ジメチルブチルアミン(S6興奮薬)

ケース1

2017年12月11日にレスリングの成國大志選手から興奮作用がある禁止物質メチルエフェドリン(methylephedrine)が検出されたことがわかりました。同選手は、競技成績の失効と資格停止処分1年8ヶ月が科せられました。検出された原因は、風邪薬の使用によるものとされています。

ケース2

2018年1月17日に水泳の川崎駿選手から興奮作用がある禁止物質1,3ジメチルブチルアミン(1,3-dimethylbutylamine)が検出されたことがわかりました。同選手は、競技成績の失効と資格停止処分7ヶ月が科せられました。検出された原因は、海外サプリメントであるガスパリニュートリション社の「ANAVITE」の使用によるものとされています。

  1. プレドニゾロン,プレドニゾン(S9糖質コルチコイド)

ケース

2018年3月1日にフェンシングの木村結選手から興奮作用がある禁止物質プレドニゾロン(prednisolone)とプレドニゾン(prednisone)が検出されたことがわかりました。同選手は、競技成績の失効と資格停止処1年3ヶ月が科せられました。検出された原因は、治療薬の使用とTUEの申請漏れとされています。

  1. クレンブテロール(S3 ベータ2作用薬)

ケース

2017年12月11日にレスリングの成國大志選手から興奮作用がある禁止物質クレンブテロール(clenbuterol)が検出されたことがわかりました。同選手は、競技成績の失効と資格停止処分1年8ヶ月が科せられました。検出された原因は、治療薬の使用によるものとされています。

  1. パラ・ドーピング

ケース

2017年12月25日にカヌーの鈴木康大選手がドーピング禁止物質を小松正治選手のドリンクに投与した事による違反がわかりました。同選手は、競技成績の失効と資格停止処分8年間が科せられました。

国内におけるドーピングの実態

平成29年度のドーピング違反事例は、過去と同様に蛋白同化薬、興奮薬、糖質コルチコイドによるものが多く、選手から検出される禁止成分の系統は同じ傾向にあると言えます。

そして、平成29年度の陽性事例では、選手がドーピング禁止物質を故意に摂取してドーピングになった事例はありません。治療薬や海外サプリメント、ドリンクへの薬物混入、TUE申請漏れなど、アンチ・ドーピング教育が選手へ浸透していれば防ぐことができる事例ばかりでした。

2020年には東京五輪の開催も決まっており、ドーピングのないクリーンな国を実現するためにもアンチ・ドーピングの環境を普及していくことが重要になります。選手は、東京五輪で活躍できる可能性を台無しにしないためにも、自身が使用する医薬品やサプリメントの使用可否に関する相談は専門家やメーカーに直接しましょう。また、メーカーは選手に安全なサプリメントを提供するために第三者認証の取得について今一度考え直してみてください。

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