コラム

ドーピングの基本

持病を抱えている選手をドーピングから守るTUE制度とは?

前回の記事では、マリア・シャラポワ選手のメルドニウムによる陽性事例を基に監視プログラムについて解説しました。
出典:ドーピング違反にならない!?監視プログラムとは
マリア・シャラポワ選手の陽性事例はどうすれば防げたのか?
選手は持病の治療に使用する薬にドーピング禁止物質が含まれている場合は使用できないのか?今回は、TUE制度について解説します。

TUE(Therapeutic Use Exemption)制度

TUE制度とは、治療目的使用に係る除外措置のことです。原則として試合の30日前までに申請する必要があります。TUEが適用されれば、治療薬が禁止物質として指定されていてもその薬を使用することができます。
その他にも、緊急時には遡及的TUEという、治療薬を使用した後に申請する制度もあります。
TUEは以下の4つを満たしていることが適用の条件になります。遡及的TUEは、以下の条件に加え、緊急である必要があります。

1.治療をする上で、使用しないと健康に重大な影響を及ぼすことが予想される
2.他に代えられる合理的な治療方法がない
3.使用しても、健康を取り戻す以上に競技力を向上させる効果を生まない
4.ドーピングの副作用に対する治療ではない

重要な点としては、TUEは申請をすれば必ず承認される制度ではないことです。過去には、申請が通らなかったケースもあります。選手の皆さんは、TUEを申請する際には医師とよく相談することが大事です。

TUEはどこに申請するのか?

実際にTUE制度を申請したい場合はどこに申請すればよいのでしょうか?
TUEの申請先は、選手の状況によって異なります。基本的には申請先は以下のように分類されています。

<申請先が国際競技連盟となる対象者>
・国際大会出場予定のある競技者
・チームスポーツの国際大会へ出場する予定のあるチームに属する競技者
・国際競技連盟に居場所情報の提供を求められている競技者

<申請先がJADA(日本アンチ・ドーピング機構) TUE委員会となる対象者>
・JADAから居場所情報の提供を求められている競技者
・JADAの告知する「TUE事前申請が必要な競技大会一覧」に該当する競技会へ参加する競技者

世界大会に出場するレベルの選手であれば国際競技連盟、国内の大会に出場するレベルの選手であればJADA TUE委員会が申請先になります。上記に該当しない選手は、禁止物質・禁止方法を使用する前にTUE申請をする必要はありません。しかし、競技会においてドーピング検査を受けた後、JADAからTUE申請が必要な旨の連絡があった場合は、TUE申請を行う必要があります。

TUEはどのレベルの大会から必要か?

現在は、未成年でもドーピング検査の対象になるため、可能性としてはどのレベルの大会でも必要になります。
ですが基本的には、JADAのホームページに国内のTUE事前申請が必要な競技大会一覧が記載されていますので、そこを参考にしてみてください。TUE申請が必要な大会=ドーピング検査が行われる大会です。ドーピング検査には検査コストがかかる上、ドーピング検査室の確保が必要となります。JADAのサイトを見る限りでは国内上位レベルのある程度規模の大きい大会が対象となっています。

TUE申請漏れによるドーピング陽性事例

2018年3月27日にフェンジングの選手である木村結選手のから、プレドニゾロン(prednisolone)が検出されたという報道がありました。
検出された原因は、病気の治療のために服用していた薬です。2016年6月まではTUEの申請により承認されていましたが、それ以降はTUEの申請漏れで承認されていない状態でした。同選手は、競技成績の失効と1年3ヶ月の資格停止処分が科せられました。
木村選手の陽性事例は、TUEの申請をしっかり行っていればドーピングを防げた事例です。前回の記事で掲載したマリア・シャラポワ選手の陽性事例もTUEを申請していれば防げた事例の可能性もあります。

ルールを知ることが競技人生を守る

マリア・シャラポワ選手や木村結選手のように、持病の治療のために薬を服用している選手は少なくありません。マリア・シャラポワ選手がTUEを申請していたのか詳細は不明ですが、木村選手はTUEを申請していれば競技の失効と1年3ヶ月の資格停止処分を科せられることはありませんでした。1年以上も競技生活から離れるのは選手にとって大きな痛手なはずです。
防げるはずのドーピング違反を防ぐためには、選手自身がドーピングのルールを理解するだけでなく、選手の関係者もルールを理解した上でサポートをしていくことが重要だと思います。持病を抱えている選手の皆さんは現在自分が使用している薬にドーピング禁止物質が含まれていないか、含まれていた場合TUEを申請すれば服用可能な薬なのか、今一度確認してください。ドーピングについて不安なことがあれば専門家に相談することをお勧めします。最終的に競技人生を守れるのは選手自身です。

関連記事:お薬手帳が重要!?ドーピング違反から自分を守る方法