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ドーピングニュース

澤さんも使っていたピル。ドーピングの可能性は?

2017年12月、女子サッカー元日本代表の澤穂希さんが現役時代、生理周期をコントロールするために「ピル」を服用していたことを明かしました。
海外チーム在籍時、チームメイトの多くが生理周期をコントロールするために日常的にピルを使っていたことがきっかけで澤さんも抵抗なく使い始め、結果的に試合前に生理で悩むことが減ったということでした。
澤穂希さんのインタビュー記事(日経ウーマンオンライン参照))

国内の女性トップアスリート約700人に生理に関しアンケートを取ったところ、4人に1人が治療を必要とする生理不順や生理困難に悩まされているにもかかわらず、そのほとんどが痛み止めでの対応のみしかしておらず、ピルで生理周期や生理痛をコントロールしている人は、全体の約2%しかいないというデータがあります。
国内選手での使用が広まっていない理由には、副作用に対するイメージの強さや、コンディション調整にどのように使えるか等正しい知識がないことが背景にあるようです。
女性アスリートの現状(国立スポーツ科学メディカルセンター、能瀬さやか著)参照)

ピルとは一体どんなもの?

ピルは、排卵前に生成され、体を妊娠できるような環境に整えるエストロゲン(卵胞ホルモン)と、排卵後に生成され、胎児が成長できるような環境に体を整えるプロゲステロン(黄体ホルモン)といった2種類の女性ホルモンを主成分とした医薬品のことで、服用することで血中の女性ホルモンを補充する作用があります。
プロゲステロンの補充により、体はすでに排卵後であるかのように間脳(ホルモンの体内量をコントロールする器官)が錯覚し、結果としてホルモンの産生を抑制し、排卵を抑制することができます。

ピルのメリットとは?

一般的にピルは避妊の効果で知られていますが、生理周期を整えてくれたり、PMS(月経前症候群)や生理での出血量を軽減してくれたりするなど、生理不順の改善にも用いることができる薬です。また、ピルは飲むタイミングを調整することで、試合当日と生理が被らないようにすることも可能にします。
澤選手は医師と相談しながらピルを使ったことで、試合で圧倒的なパフォーマンスを維持することができていたようです。

ピルの持つデメリットは?

ピルの副作用は主に気持ち悪さや吐き気、生理以外のタイミングで出血してしまう不正出血が挙げられ、これらを理由にピルの服用を中断する人も少なくはありません。
また、多くの医薬品との飲み合わせも悪く、風邪を引いた時にも一部の医薬品との飲み合わせに注意が必要となります。
その他にも、生理周期の調整やPMSの軽減を目的に使用したとしても排卵が抑制されてしまうので、服用している間は妊娠ができないというデメリットもあります。

ドーピングになるピルはあるか?

澤さんがインタビューで「ドーピング違反にならないようなピルを医師から処方してもらった」と言っていましたが、ピルの中でドーピング違反に引っかかるようなものはありません。
ただし、ピルではありませんが、クロミフェン(clomifen)に代表される選択的エストロゲン受容体調節薬(SERMs)や、レトロゾール(letrozole)に代表されるアロマターゼ阻害薬といった女性ホルモンの量をコントロールする物質は、男性ホルモンの量を増やしてしまい、ステロイドと似た作用を示す可能性があるため、使用するとドーピング違反になってしまいます。

澤さんが公表したことで、今後女性アスリートがコンディション調整の一環としてピルを使用する人が増えてくることが考えられます。
また、副作用の観点から使用を敬遠されることの多かったピルですが、今ではピルの用量が少ない、低用量ピルを処方することが主流となっているため、副作用で困る人が減ってきているのも事実です。
周りの人に相談しにくい内容ではありますが、もしも生理関連のことで困っているのであれば、一度医師に相談してみることをおすすめします。

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