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栄養

管理栄養士が指南!スポーツの現場でサプリメントを利用する際の注意点

サプリメントなどの補助食品はスポーツ現場において身近な存在となっている。サプリメントはパフォーマンスアップの一因になる可能性を持つ反面、過剰症やドーピングのリスクもある。そのため、利用にあたっては、メリット・デメリットをきちんと理解した上で摂取することが必須であり、アスリート自身のみならず、スポーツに携わる全ての職種において、知識と危機管理が求められている。
今回はスポーツ栄養士・奥隅氏の視点から述べていく。

サプリメント摂取の有用性

サプリメントは、通常の食事からとりにくい栄養素を手軽に摂るために開発された。含まれる栄養素はひとつのものから、多種含まれているものもあり、形状も様々である。スポーツ現場においてサプリメントが有効活用できる場面は多いため、必要に応じて正しく利用することで、選手のベストコンディションを維持したい。
では、活用できる場面の例をいくつか挙げてみよう。

1.特定の栄養素を摂取したい場合
トレーニング内容や増量などの目標にあわせて付加したい栄養素があり、食事からの摂取だけでは難しいとき

2.トレーニング内容や環境により必要な栄養量が確保できない場合
身体活動量が多くなるとエネルギーや栄養素の必要量が多くなるが、それをみたす食事量を摂取できないとき

3.速やかな栄養補給が必要な場合
移動や練習・試合時間など、スケジュール面の兼ね合いで、食事時間や食後時間が十分に確保できないとき

4.消化吸収能力や食欲が低下している場合
胃腸の状態が悪く、消化吸収能力が低下しているときや、緊張・疲労などによる食欲減退で十分な摂取量か確保できないとき

食事からの摂取が基本であり、最も重要だが、上記のような場合は、サプリメント類の利用を考えてみるのもよいだろう。

サプリメント摂取に伴うリスク

サプリメントの摂取には、もちろんリスクがあることもおさえておきたい。

1.栄養面で考えられるリスク

サプリメントや栄養剤の多量摂取をすれば、脂溶性ビタミンやミネラル類の過剰摂取は容易であり、過剰症や他の栄養素の吸収阻害などを引き起こす危険性もある。また、精製された単一成分のみが含まれるものを継続摂取すると、体内の栄養素の相互バランスを崩す可能性もある。
以下の耐用上限量(表1)と、過剰症の症状(表2)も確認しておくとよいだろう。

表1:栄養素の耐用上限量

表2:各栄養素の過剰症でみられる症状

2. ドーピングに関わるリスク

サプリメントや栄養剤の中には、ドーピング禁止物質や体内に入ってから非合法的な物質に変化するものが混入している恐れもある。さらに、サプリメントのポジティブな効果を示した研究も、研究方法や対象者によって妥当性が変わってしまうこともあり、注意が必要だ。ドーピング防止についてはさらに詳しく述べていこう。

スタッフが行うべきドーピングに関する情報収集

アンチ・ドーピングのために、国内では、国立スポーツ科学センター(JISS)及び、国立健康・栄養研究所において、サプリメントや栄養素、機能性成分に関する信頼できる情報を公開している。国外の情報においては、オーストラリア国立スポーツ研究所(AIS)が公開しているものを参考にしたい。

参照:

国立科学スポーツセンター スポーツフード&サプリメント

医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報

Australian Institute of Sport,Sports Nutrition,Supplements and Sports Foods

AISは、スポーツフードや成分を、科学的な証拠や安全性、スポーツパフォーマンス向上に関する有効性などから、エビデンスレベルの順にA.B.C.Dの4グループに分類している。エビデンスレベルはAグループが最も高い。Dグループはドーピングに繋がる危険性が高く、アスリートの使用は禁止している。この情報は常に更新されているため、随時チェックして頂きたい。

サプリメントを使用する前に考えるべきこと

では、実際にはどのようなことを考慮して商品選択や摂取量決定をしていけばよいだろうか。

1.科学的な根拠に基づいているか

科学的な根拠は実験や研究によって得られるが、利用するにあたっては、どのような実験内容や研究結果によって証明されたかを知ることが大切である。実験や研究には様々な種類がある。実験対象だけでも、ヒトを対象に行うもの、動物を対象に行うもの、細胞などに対して試験管内で行うものがある。さらには、ヒトを対象に行っていても、全ての人に当てはまるとはいえないこともある。競技や種目によって運動時間や運動強度、体内の代謝反応は異なるからである。つまり、どのような運動を対象にして得られた実験・研究結果であるのか等の情報もあわせて判断するべきである。

2.食事摂取状況を考慮する

まずは食事からの摂取が必要量をみたしているかどうかの確認を行い、不足している栄養素に関して、サプリメントからの補充を検討する。食事からの摂取が基本であることは忘れないで頂きたい。また、現在の摂取状況が分からなければ、サプリメントの利用量も決定できないため、食事に関する評価は必要である。

その他にも

  • 外国製のサプリメントや栄養剤は使用しないようにする。
  • メーカーが独自に表示している、禁止物質を含まない文言は保証には不十分であるため、第三者認証機関が保証している商品を選択する。

といったことも重要なポイントである。

専門職との連携

補助食品の摂取を検討する際には、第三者認証を経たものをスポーツドクターやスポーツファーマシストと相談のうえ、取り入れることが勧められる。サプリメント等の健康補助食品であれば、日頃の栄養素摂取状況を踏まえたうえで、管理栄養士(スポーツ栄養士)のアドバイスのもと摂取することが望ましい。使用する場合には、個別の栄養アセスメントを行い、本当に必要か、どれだけ摂取したらよいかなどについてきちんと考えよう。
栄養素の過不足やドーピングは、アスリートの競技人生を左右する危険性があるため、いかなるサプリメント摂取においても慎重な対応が必要だ。スポーツ現場では全ての職種において、これらに関する知識が求められる。
これを機に、改めて考えてみてはいかがだろうか。

【プロフィール】

奥隅知里(おくずみちさと)
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急性期総合病院で管理栄養士として勤務し、栄養指導や献立作成を経験。
現在、プロ・アマチュアアスリートやジュニア選手に対し、栄養指導、食事提供、セミナー開催、メディカルチェック等を行っている。また、サポートスタッフ向けのセミナーで講師としても活動。臨床現場で得た経験も活かし、アスリートを支える活動を展開中。

経歴
・Jリーガー合宿栄養サポート
・女子サッカークラブメディカルサポート
・Jリーグチームジュニアスクール
・自転車国体選手栄養サポート
・女子ラグビー選手栄養サポート
・女子陸上選手栄養サポート
・一般向け健康指導、ダイエットサポート

サポート競技
陸上/サッカー/ラグビー/アメリカンフットボール/自転車/バスケットボール