コラム

インタビュー

選手インタビューNo.1/野﨑舞夏星

「自分の気持ちに打ち克つことができた相撲人生だった」

高校時代、第4回世界女子ジュニア相撲選手権大会の軽量級で優勝し、軽量級で初めて日本人として世界一になった女子相撲の野﨑舞夏星選手。野﨑選手の13年間の相撲人生における信念は「自分の気持ちに打ち克つこと」だったと言います。彼女は最大限の結果を出すために、練習や相撲に関わることはもちろん、日常生活においても常に自分に厳しくしていたそうです。そして、がむしゃらに、自分を客観視することを追求していたと言います。
そんな野﨑選手は10月14日をもって現役最後の試合を迎えます。野﨑選手にとって、女子相撲とは何だったのか。そして、アスリートとして切り離せないアンチ・ドーピングについてお話を伺いました。
 

野崎舞夏星さんのインタビュー風景

1.波乱万丈な相撲人生を通じて人間として成長できた。女子が相撲をするという魅力。

—残り数週間で現役最後の試合を迎えますが、今感じている率直な気持ちを教えてください

野﨑さん
高校生までは、ジュニアの部で世界一になり、順調すぎるぐらい目指したら目標を叶えられる相撲人生でした。高校生までは相撲と並行してレスリングと柔道もしていたため、相撲で苦しんでも、メンタルの面で他の競技をすることで気分転換になり、結果に繋がっていたと思います(笑)
大学に入ってからは、私の性格が短期集中型で相撲に向いているのとシニアで世界一をとりたいという想いも強かったため覚悟を決めて相撲一本に絞りました。しかし、大学に入ってからの3年間は肩の脱臼や、怪我がなくても納得がいく結果も出ませんでした。「相撲の力をつけろ」といろんな人に言われ、全部吸収しようとして相撲に取り組んでいましたが、納得がいく結果が出ず葛藤し続けた3年間でしたね。今振り返ると3年間は本当に苦しかったです…。3年間苦労をしてきた分、今年に入ってからは、怪我のことも考えず、思いっきり相撲に取り組めているので楽しめています!今は相撲を全力で頑張ってきて良かったと感じています!

—女子相撲からどんなことを学びましたか?

野﨑さん
女子相撲を通じて私は、人間として成長できたと思います(笑)高校生の時のように順調な相撲人生だと私は人間としては軽い人間になっていましたね。相撲が上手くいかなった時も「なんで自分ばっかり」という気持ちもあったのですが、その時に怪我をしている人の苦しみ、スランプで悩んでいる人の気持ちが初めて分かりました。怪我をしていた期間は相撲関係なくいろんな人の気持ちを知ることができたので良い経験になりました。

—野崎さんのお話を聞いていると女子相撲が本当に好きだなと感じるのですが、ズバリ、女子相撲の魅力は何でしょうか?

野﨑さん
まず相撲の魅力は、緊張感がある雰囲気の中、一瞬で勝負が決まり、ルールも簡単なため誰でもできるし、見ている人も楽しめるのは一番の魅力ですね!特に、体格差が倍以上の選手と試合をすることもあるので「体格の小さい選手が大きい選手に勝つかもしれない」という面白さは見ている人にとっては楽しめると思います。
そして、相撲に女子という要素が加わることで、相撲は男子がするスポーツというイメージが定着している分、「女子が相撲をする」ということ自体が選手の気持ちの強さを表しているので、そこが女子相撲の魅力ではないかと思います。女子が相撲をするのは危ないという人も多いけど、私たちは相撲が純粋に面白いからやっているんです!あとは、女子相撲はレスリングの要素があったり、土俵際の粘り強さは、最後まで諦めない選手の気持ちを感じれる瞬間だと思うので魅力なのではないかと思います。私は、男子の相撲よりも、女子の相撲の方が見ていて面白いですね(笑)

—女子相撲は他の競技に比べるとマイナー競技だと思うのですが、競技環境はどうでしたか?

野﨑さん
高校生までは、道場で相撲をしていましたが、コーチも含めて女性は私しかいない環境でした。その分、伸び伸び相撲をすることができたのは良かったです!競技の設備は、大学の方が整っていたとはいえ、ドーピング、怪我、食事等競技以外のサポート環境は大学にはなかったので自分で探すしかありませんでした。自分で管理しないといけないのは大変ですね。同じ大学でもアメフト部はサポート環境が整っていたので、いろんな部活で競技以外のサポート環境が整うことが当たり前になるべきだと感じています。でも、サポート環境はなかったですが、その分、リハビリのために病院に通い、部活以外の新たな環境と出会えたことは良かったです。社会勉強にもなりました。

2.サプリメントに対するドーピングの恐怖。ドーピングに対する意識が180°変わった出来事

—食事をする上で意識していたことはありますか?

野﨑さん
食事は、なるべく自炊をしてバランスよく食べることは意識しています。昔から周りから「体重を増やした方が良い」と言われていましたが、私の相撲はスピードが持ち味のため、低学年の時は体重を増やすとスピードが落ちてしまうのではないかという不安がありました。しかし、トレーニングに加えて、プロテインを4年生になってから使用したことにより、疲労回復、筋肉量共に変化が見られました。現在は、少し体重を増やし、スピードは落ちないままパワーもついてきています!

—プロテインは何を基準に選んでいますか?

野﨑さん
一番初めにプロテインを探した時は、「プロテイン ドーピング 大丈夫?」と検索しました。プロテインに関しては、4年生まではドーピングになったら嫌だなと思い使っていなかったんです。でも、別競技の選手からプロテインをすすめられ、使用してみて良かったので現在も使用しています。アンチ・ドーピングの認証マークがついているか確認した上で、人からのオススメ、アマゾンの星数の多さとコメントを見て選んでいます(笑)
ちなみにアンチ・ドーピングの認証マークは、プロテインを購入する際に知りました。最近のサプリメントは、どのサプリメントにもついているものだと思っていました(笑)私は、サプリメントは調べるまで、危険なものというイメージが強かったため、マークがあることで安心感はあるし、必要性も感じますね。

—現在ドーピング対策をする上で実践していることはありますか?

野﨑さん
ドーピングの領域は、怪我のこと以上に自分で調べたり、考えても私にとってはわからなさすぎる領域です…。(笑)病院で処方された薬は、ドーピング違反にならない薬かどうかを病院の先生に相談していますね。サプリメントはドーピングが大丈夫なものを使用するようにしています。

—ドーピングに対して不安はありましたか

野﨑さん
普通に生活していたらドーピングにはならないでしょって思ってました(笑)市販薬も試合前以外はあんまり気をつけてなかったような…。今までは薬を処方された時や、試合前はドーピングに対しては敏感になっていました。しかし、部活の先輩や他の競技で関わりのある選手がドーピング違反になり、他人事ではなく身近なものになりました。

—身近な選手がドーピング違反になってから行動に変化はありましたか?

野﨑さん
「実際にドーピング違反になることがあるんだ」と危機感を持つようになりましたね。それからは、自分で調べ、病院の先生に確認をしています。身近な選手がドーピング違反になってから、対策することの重要性や競技ができない危険性に気づくので「ドーピングってこんなに怖いものなんだな」って感じています。

—スポーツファーマシストの存在は知っていましたか?

野﨑さん
スポーツファーマシストの存在は1年生の冬に知りました。存在は知っていたのですが、私の周りには、ドーピングについて相談できるスポーツファーマシストが全然いませんでした。かといってドーピングは他人事だと思ってたので自分で調べて探すことはしませんでした…(笑)薬を処方される際には、病院の先生に確認はしていましたが、相撲部の先輩が病院の先生に処方された薬を飲んでドーピングになっていたため、医者はドーピングに関しては詳しくないイメージがありましたね。ちなみに、DRO(Drug Reference Online) も使用していましたが、市販薬は検索しても出てこないため、全然活用できませんでした…。一般の人が分からないドーピングについてすぐに相談できるスポーツファーマシストの存在は必要だと思います。

—ドーピング対策をする上で、サポート側に求めることはありますか?

野﨑さん
ほとんどの人は、スポーツファーマシストの存在を知る術がないんじゃないでしょうか?私が知らないだけかもしれませんが…。 (笑)スポーツファーマシストの人は存在を選手に向けてもっとアピールしてほしいと思っています。私は、インターネットで調べても違う情報だったら嫌だなと思ってしまうので、分からないことは自分で調べるよりも、信頼ある人に聞いています。ドーピングに関してはドーピング違反になったことがないので、「ちょっと気をつけてればいい」ぐらいの気持ちで、自分から対策のために行動しようとは思っていませんでした。

—スポーツファーマシストの人にはどういうサポートをしてほしいですか?

野﨑さん
スポーツファーマシストの人には、医薬品やサプリメントの使用可否に関して大丈夫なのかアドバイスが欲しいのと、使用がダメな場合は代わりになるものを教えて欲しいです。「この薬やサプリメントは使用したらダメですよ」としっかり言ってくれる人が身近にいてほしいですね。

3. 現役最後の試合は自分のために頑張る。今後は、相撲もアンチ・ドーピングも選手にとって身近なものに

—今後の進路はどう考えていますか?

野﨑さん
今後は、マスコミと指導者として女子相撲に関わっていきたいと思います。私が情熱大陸をはじめ複数のメディアに出たことで相撲=男がするスポーツ、体格が大きい人がするスポーツというイメージはくつがえせたと思うので、これからは選手としてではなくマスコミ側で選手や女子相撲の魅力を広めていきたいですね。

—女子相撲のどういった部分を広めていきたいですか?

野﨑さん
今は普通の女子高生でも相撲しているんですよ!高校生と一緒に稽古をすることもあるのですがみんな普段も稽古でもキャピキャピしていますが、結果も出しています!本当に楽しそうですね!野球やサッカーのように女子相撲も「学生にとって特別な競技ではなく、身近なスポーツ」として世間に伝えていきたいですね。女子相撲も学生にとって身近な競技と認識されるように、女子相撲は特別な競技、部活という概念を、メディアを通じて変えていきたいです。

—指導者としてはどう女子相撲と関わっていく予定ですか?

野﨑さん
教える子達には、相撲を純粋に楽しんで欲しいという気持ちが一番強いです!男子の相撲と女子の相撲とでは指導方法は異なると思っています。数少ない女子の指導者として、柔道やレスリング等いろんなスポーツの楽しい要素を入れながら「相撲は普通のスポーツなんだよ」ということを伝えて選手には楽しんでもらいたいですね。

—最後に、全日本女子相撲選手権大会に向けて意気込みと、このコラムを見ている人たちへメッセージをお願いします

野﨑さん
全日本女子相撲選手権大会で、稽古をしっかりして選手として出場する試合は最後になります。今まで、苦労してきたことが無駄にならないように最後の試合は自分のために頑張りたいと思います。軽量級で優勝をして、有終の美を飾りたいです!
そして、ドーピング違反は、選手にとっては怪我よりも深刻な問題だと思います。アンチ・ドーピングのサポート体制やアンチ・ドーピングに関する情報が選手にとって、より身近なものになるように今後あってほしいです。私からアドバイスなんて言える立場ではありませんが…私の相撲人生は高校生までは順調でしたが、大学では怪我に悩まされました。怪我の経験が今ではプラスになっているので、壁にぶち当たっている人がいればプラスに考えてみてください!

プロフィール

野崎さんプロフィール画像

野﨑舞夏星(のざきまなほ)
1996年07月17日生まれ/22歳
小学生の頃に、レスリングを習っていた兄の影響でレスリングを始める。
そのレスリングチームで出場することになった相撲大会で、相撲に魅了される。
小学生までレスリングと相撲を、中学生からは部活動で柔道も始め、三つの格闘技を両立させる。
高校三年生の時に目標としていた女子相撲のジュニア世界大会に出場し優勝。
大学は、シニアの世界一を目指し同じ階級でシニアの世界チャンピオンである先輩を追って立命館大学に入学。
しかし、3年生までは右肩の脱臼癖に悩まされる。
怪我による苦しい経験を乗り越え、今年インカレで怪我から復帰後初優勝を飾る。団体でもチームの日本一に主将として貢献。

主な戦績
2013年4月 – 第1回国際女子相撲選抜堺大会 軽量級 優勝
2014年4月 – 第2回国際女子相撲選抜堺大会 軽量級 優勝
2014年8月 – 世界女子ジュニア相撲選手権大会 軽量級 優勝
2014年10月 – 全日本女子相撲選手権大会 軽量級 優勝
2015年6月 – 第1回全国女子相撲選抜ひめじ大会 優勝
2018年7月 – 第6回全国学生女子相撲選手権大会優勝