コラム

インタビュー

選手インタビューNo.5/中野源一選手

「アルティメットに恩返しがしたい」

突然ですが、皆さんは「アルティメット」という競技を知っていますか?アルティメットはフライングディスクを使用することが特徴の競技で、2028年のロサンゼルス五輪で五輪種目になることも検討されている、今注目の競技です。
まだまだメジャー競技とは言えないアルティメットの普及活動を日本代表、東京都フライングディスク協会、会社員と3刀流で取り組んでいる中野源一選手。「アルティメットに恩返しがしたい」と語る中野選手にアルティメットの魅力、中野選手が考えるアルティメットの展望、そして、サプリメントとドーピングについてお話を伺いました。

ダイナミックなプレーはアルティメット最大の魅力

Q.アルティメットを始めようと思ったきっかけは何ですか?

中野選手
私は、高校までサッカーをしていたのですが、ベンチにも入れないレベルで、大学サッカーで通用する絵は正直、描けませんでした。しかし、10年間真剣にサッカーに打ち込んできたので、大学でもその経験に恥じないことをしたいなと思っていました。そこで頭によぎったのが大学から始める人が多い競技ということで、アルティメットとトライアスロンです。それぞれ新歓コンパに行ったのですが、アルティメットの体験で先輩に「日本代表になれるよ」と言われた時に、アルティメットで日本代表になるために努力をすれば、10年間サッカーに打ち込んだ自分から見ても恥ずかしくない目標だなと感じてアルティメットを始めました。

Q.アルティメットの魅力は何ですか?

中野選手
アルティメットの魅力はダイナミックなプレーが多いことです。風で浮いたりするフライングディスクを、ダイビングキャッチする姿は選手も見ている人達も心が動く瞬間かなと思います。
また、アルティメットはフェアプレーを最重視するためにセルフジャッジ制を導入しています。セルフジャッジ制は、アルティメットを客観的に見た時には魅力だと感じる部分ですね。

Q.日本のアルティメットが世界で通用する部分はありますか?

中野選手
日本の細かいパスワークや繊細なスローの部分は世界に通用すると思います。 日本は現在世界ランク6位です。ただ、大会ごとにスポットを当てると男子のA代表はアメリカに次いで準優勝をしており、世界との差はほとんどないと感じています。現状、世界で一番強い国はプロリーグもあるアメリカですが、ロサンザルス五輪で正式種目になった際に、日本が金メダルを取る可能性は十分あると思います。

Q.アルティメットのサポート環境はどうですか?

中野選手
お金の面や環境はまだまだ整っていないですね。国際大会の遠征費も自己負担なのでメジャースポーツと言われる競技と比較すると差は感じます。また、一般の方がアルティメットを気軽に体験できるような環境は現状ないです。なので、アルティメットを体験したい人は私に声をかけてください!!(笑)体験会を企画します!

Q.選手と会社員を両立する生活は大変ですか?苦労していることはありますか?

中野選手
タイムマネジメントは難しいですね。基本的には平日週5で働いて、週末はチームで練習や試合という生活を送っています。平日の個人的なトレーニングの時間を週2.3作っていきたいとは思っている中で、トレーニングの時間は仕事との兼ね合いで遅い時間帯になってしまうこともあるのでそこのマネジメントは難しいなと感じています。

Q.仕事はどういうお仕事をされているのですか?

中野選手
「MERCI」というスポーツ業界に特化した求人サービスの立ち上げをしています。スポーツ業界で働きたい人と、人材を募集しているスポーツ事業を行なっている企業向けに採用支援をしています。採用という手段を通じて事業や会社をどう大きくしていくかまで踏み込めることが面白いので、今仕事をしています。最終的にはこの経験をアルティメットの普及に繋げていきたいなと考えています。

ドーピングを防ぐことは競技人生を守るぐらいの価値がある

Q.ドーピング対策として行っていることはありますか?

中野選手
大学3年時に日本代表に選ばれるようになってからは薬を飲まないようにしています。世界大会の際は代表のうち一人は必ずドーピング検査を受けるのですが、いつ自分が検査を受けてもおかしくない状況なので不安ですね。また、アルティメットは団体競技のため、自分への影響ももちろんのこと、チームでやってきたことも台無しになってしまうと強く感じているので気をつけるようにしています。

Q.薬は普段飲まないんですね!?

中野選手
薬は、全くとらないようにしています。前提として病気にならないようにしているのですが、病気になった時もドーピングのリスクを考慮して病院に行かないですね。

Q.病院にすら行かないのですか!?

中野選手
2年前に病院に行った際に、お医者さんに「責任持てないから薬を処方できない」と言われて、ドーピングの対応ができるお医者さんがどこにいるかも分からなかったです。なので、病院に行ったところで変わらないと思って行っていません。R-1を飲んで治しています!根性で治しています…

Q.ドーピング対策をする上で困っていることはありますか?

中野選手
オンライン講習では、ドーピングがなぜダメなのか・処分の話など、ドーピングをした場合の情報はすごく学べるのですが、肝心のドーピングを防ぐための情報は全然学べません。ドーピングをした場合の情報だけだと、危機感だけ募る状態になるので逆にオンライン講習を受けることで不安になりますね(笑)

Q.サプリメントは普段使用していますか?

中野選手
サプリメントは日本代表チームのトレーナーに相談し、大丈夫そうなものを選んでもらっています。使用するサプリメントの基準は、JADAの認証マークがついているかと実績ある選手が使用しているサプリメントかの2点です。2点を満たしていれば、安心感があるので使用しています。

Q.最近、JADAの認証マークがなくなったのはご存知ですか?

中野選手
えー!なくなったんですか?全然知らなかったです。今まで認証のマークはJADAのマークしか知らなかったので、他にも認証マークの種類があるのは今回のインタビューで知りました。

Q.サプリメントの認証マークは中野選手にとってどういう意義がありますか?

中野選手
安心材料にはなりますね。特に最近は、新しいサプリメントやプロテインがどんどん増えているのでドーピングの面が一番リスクになり、怖くて買えないです。マーク一つついていると安心感はありますね。

Q.スポーツファーマシストについては知っていますか?

中野選手
言葉は聞いたことあります。薬を処方してもらう時にドーピングに引っかかる、引っかからないかを判断してくれる人という認識ですね。
存在は認識しているものの、相談できるスポーツファーマシストがどこにいるのかわからないので、相談はしていません。サイトから調べることができると思うのですが、もし自宅近くの薬局にスポーツファーマシストの方がいない場合は諦めますね。わざわざ遠くにの薬局には行きたくないので。R-1を飲んで治します。

Q.スポーツファーマシストの方と接点を持った時に求めることはありますか?

中野選手
一番は薬に関わることが聞きたいです。花粉症持ちなので、花粉症になった時や病気になった時にドーピングに引っかからない薬を教えてくれるととてもありがたいです。

Q.ドーピングは選手にとってリスク管理の部分になると思うのですが、中野選手にとってドーピングを防ぐ価値とは何ですか?

中野選手
ドーピングに引っかかった時に競技ができなくなったり、競技の実績がなくなったりすることを考えると、アンチ・ドーピングは、競技人生を守ってくれていると思います。ドーピングを防ぐことは競技人生分の価値があると思います。ドーピングで引っかかると本当に何もかもが0になると思うので。

Q.アンチ・ドーピングを選手に認知させるためには何が必要だと思いますか?

中野選手
認知していくための手段は2つあるかなと思います。1つ目は特に日本代表選手の人達は、ドーピングが身近な分野だと思うのでそういう選手達がアンチ・ドーピングの重要性を発信していく活動が必要であると感じています。 2つ目は各競技団体が発信していくことだと思います。アルティメットの選手に一番発信できるのは日本フライングディスク協会だと思うので、協会が働きかけることが選手に認知させるためには大事ですね。

2028年ロサンゼルス五輪を見据えて

Q.競技を普及させていくにはセルフブランディングも必要だと思うのですが、取り組んでいることはありますか?

中野選手
3つの掛け合わせを駆使していきたいと考えています。日本代表としての自分、東京都フライングディスク協会としての自分、会社員としての自分の3つです。これらを掛け合わせて自分にしかできないことを今後していきたいと考えています。

Q.今後の目標について教えてください

中野選手
2028年にアルティメットが正式に五輪種目になること、五輪で選手として活躍することを目標に置いています。自分が五輪で代表選手に選ばれた際に、ただ競技者としてアルティメットをしているだけではファンはその時ついていないと思います。協会で普及活動をしていく中で自分の存在を知ってくれる人を増やし、企業で働き、ビジネス的な知見を得ることで競技の普及を効率的にできると考えています。2028年のロサンゼルス五輪で活躍する際に選手としても競技としても結果を最大化したいという想いから今は、3つの掛け合わせ駆使していきたいと考えています。自分が幼少期憧れていたオリバーカーンのように後ろ向きの人に勇気を与える、前向きな人に新たな刺激を与えることができる選手になりたいです。

Q.コラムを見ている人へメッセージをお願いします。

中野選手
私は、2つの点でスポーツには価値があると考えています。1つ目は、年齢とか性別とか国籍とか関係なく一緒に楽しめること。2つ目はAIの時代と言われている中でもスポーツは生身の人との戦いなので感情が動かされるコンテンツであることです。スポーツの価値を高めたり、守っていくにあたってドーピングの問題はスポーツの価値を下げることになると思っています。選手だけが、ドーピングのことを気にしていてもダメだし、選手だけで解決できる問題ではないです。ドーピングは、選手の関係者含めて一緒になって向かい合っていく問題だと思っています。スポーツに関わる全員で選手をドーピングから守り、スポーツの良さを世に発信していきましょう!

【プロフィール】
中野源一(なかのげんいち)
1994年生まれ、神奈川県川崎市出身。慶應義塾高等学校卒業。
2017年3月慶應義塾大学経済学部卒業
2017年4月株式会社リクルートキャリア入社、2019年4月退職
2019年5月Ascenders株式会社入社、東京都フライングディスク協会事務局を兼業

大学生からフライングディスクを使った競技「アルティメット」に取り組み、現在は日本代表選手として活動中。アルティメットの2028年の五輪種目化に向けて、競技者としてだけでなく国内での普及活動にも尽力している。主には東京都内の小中学校を中心に、授業内もしくは放課後での競技体験会の企画・運営を行なっている。また、Ascenders株式会社では前職の人材業界での経験を活かし、スポーツ業界の企業に特化した採用支援に取り組む。

【競技実績】
・WFDF 2019アジア・オセアニアアルティメット&ガッツ選手権大会ミックス部門日本代表 2019年7月23日〜27日 中国上海にて開催
・WFDF 2019アジア・オセアニアビーチアルティメット選手権大会ミックス部門日本代表 準優勝
・WFDF 2018世界U 24アルティメット選手権大会ミックス部門日本代表キャプテン 準優勝
・WFDF 2016世界アルティメット&ガッツ選手権大会ミックス部門日本代表 6位
・WFDF 2015アジア・オセアニアアルティメット選手権大会 ミックス部門日本代表 3位