コラム

インタビュー

選手インタビューNo.6/宮地藤雄選手

教育を通じてマウンテンランニングを広めていく

トレイルランニングよりも、より急斜面を駆け上る競技特性を持つマウンテンランニング。マウンテンランニングは、険しい山道を行くこともありとてもタフで、結果が天候によって大きく影響される競技です。そんな過酷な競技で、2013年から現在までマウンテンランニングの日本代表として活躍し、マウンテンランニング業界の第一人者として知られている宮地藤雄選手。「教育を通じてマウンテンランニングを広めていく」と語る宮地選手に、業界の第一人者としてこれから取り組んでいきたいこと、マウンテンランニングの魅力、そして、アンチ・ドーピングについてお話を伺いました。

マウンテンランニングは選手として精一杯の力を発揮できる競技

Q.マウンテンランニングとの出会いを教えてください

宮地選手
私は以前、中学校の陸上部を指導する機会がありました。当時指導していた生徒達とスポーツ店に行ったところ、マレーシアで開催されるマウンテンランニングの大会のチラシを見つけました。チラシの写真を見た瞬間、この山を登りたいと思い、大会に出ることにしました。参加した大会は死ぬほど辛かったですが、ゴール後、生きた達成感というものをものすごく感じたので、マウンテンランニングにはまりましたね。それ以降自分の場所を山に求めるようになりました。出会いは本当に直感です(笑)

Q.マウンテンランニングの魅力を教えてください

宮地選手
マウンテンランニングは、自然を相手にしている競技なので思い通りにならないこと多いです。天候でコースが短くなることもあり、外的要因に振り回されるので自分の本当の力が試されます。選手として精一杯の力を発揮できる競技であることは魅力だと思います。

Q.宮地選手は競技者として大事にしていることはありますか?

宮地選手
私は、競技者として成長するために他国の強い選手から貪欲に良いところを吸収することを意識しています。トップで活躍し続けて、長く競技をするためには大事なことだと思っています。他国の強い選手は、良い意味で個人主義であり、選手として自立しています。自分のスタイルを持つこととタフであることは強い選手の特徴であると考えているので、特に意識して吸収している点です。

Q.自分のスタイルを持つということでしたが、宮地選手のスタイルは何ですか?

宮地選手
私は、しぶとさを発揮するスタイルですね。どんなにピンチでも我慢し続けます。正直、爆発的な強さやずば抜けたものはありません。我慢強さやしぶとさが私のスタイルであり武器です。

アンチ・ドーピングの認知を広めるためには情報発信と勉強の機会が大事

Q.マウンテンランニングのドーピング検査事情について教えてください。

宮地選手
マウンテンランニングはワールドカップが毎年5〜6レースあります。また、ワールドカップとは別で世界選手権が行われます。どの世界大会も上位の数名を対象にドーピング検査を実施しており、ゴールが山頂の際は、検査員の方も山頂で待機しているので大変そうです(笑)
世界選手権の場合はランダムテストも行うので、滞在期間中にホテルに検査員がきてドーピング検査を行います。国内の大会は、ドーピング検査はありません。

Q.世界大会はドーピング検査があるのに、国内大会はないんですね。

宮地選手
そうですね。国内ではドーピング検査がないため、もちろんアンチ・ドーピングの体制も不十分な業界です。ドーピング対策をする上で最初は相談できる人がおらず、本当にきつかったですね。しかし、世界に飛び込んで勝負していく選手はドーピング対策が必要です。仮にドーピングに引っかかったら自分の経歴に傷がつくだけでは済まないので、国内大会で検査がない業界の先行きには不安を覚えています。特に今後、うっかりドーピングの事例が起きる懸念は強く抱いていますね。

Q.国際トレイルランニング協会では、アンチ・ドーピング対策の一環としてQUARTZ PROGRAMが導入されていると思いますが、どういう制度ですか?

宮地選手
QUARTZ PROGRAMは、選手の健康状態をチェックする制度で、選手をドーピングから遠ざける効果があります。しかし、QUARTZ PROGRAMは、WADAのポリシーには賛同こそしていますが、ドーピング検査はしていません。

Q.宮地選手は、QUARTZ PROGRAMについてどう思いますか?

宮地選手
QUARTZ PROGRAMはクリーンを証明する制度にはならないと思っています。 健康の点では、とても良い制度だとは思いますが、アンチ・ドーピングの点で言うと疑問が残る制度ですね。QUARTZ PROGRAM=ドーピング対策の制度という間違った認識で浸透していかないかが不安です。一般的にはマウンテンランニングもトレイルランニングとして認知されていると思います。しかし、マウンテンランニングとトレイルランニングとでは種目が違い、アンチ・ドーピングのルールにおいてもマウンテンランニングはWADAに準じたルールで決められています。そのため、私はQUARTZ PROGRAMに準じたルールではなく、WADAに準じたルールで活動しています。

Q.選手の健康状態を定期的にチェックすること=ドーピングの対策をしていると掲げるのは良くないですね…長い期間日本代表として競技をしているとサプリメント等の製品提供をされる機会は増えますか?

宮地選手
大きな大会になるといろんな企業が参入するので、サプリメントの提供機会は増えますね。ただ、確実にドーピングの対策をしている製品でないと私は使用できないので、製品を提供していただいても断わるしかない時もあります。その時は心が痛いです… ドーピングの最新情報を把握した上で対策しているメーカーの製品は安心して製品を使用できます。今だと第三者認証を取得している製品になりますね。

Q.第三者認証の存在を知ったきっかけは何ですか?

宮地選手
以前は、JADA認証の製品しか使用しておらず、第三者認証の存在も知りませんでした。JADAの取り組みを調べていく中で最近、第三者認証の存在を知るようになりました。JADA認証が終了し、第三者認証が世間に浸透することで製品を選択できる幅も広がるので選手としては嬉しいですね。また、第三者認証が広まることで選手もアンチ・ドーピングの重要性や理解が深まると思うので第三者認証の存在は大事ですよね。フェアプレーの認知も広まるので、スポーツ業界全体にとって良いことだと思います!

Q.ドーピング対策を行う上で苦労したことはありますか?

宮地選手
独学でリスクヘッジをしないといけないことですね。グレーなものは摂取しないようにしていました。そのため、私が体調を崩した時に家族が薬を購入してくれても摂取できない時期もあり、家族には苦労をかけたと思います。
スポーツファーマシストは私が住んでいるところにはいないので、身近に専門家がいてくれるととてもありがたいです。

Q.アンチ・ドーピングの重要性を広めていくためには何が必要だと思いますか?

宮地選手
アンチ・ドーピングに関する情報発信と勉強の機会を作っていくことが大事になると思います。JADAやWADAとの接点がマウンテンランニングの業界はないため、対策の面は何年経っても不安になります。
情報収集の場や相談できるサービスを展開しているアトラクさんの活動が広まって欲しいです。

マウンテンランニング業界の第一人者だからこそできることをする

Q.今後のビジョンを教えてください

宮地選手
私は、もともと教員になりたいと思っており、教育に興味がありました。そのため、次世代の育成に力を入れていきたい想いが一番強いです。また、スポーツを身近にするために普及啓発活動もしていきたいです。現在、私は、選手としての活動だけでなく、ジュニアトレイルランニングの大会を各地で開催して普及活動を行っています。選手として国際大会出場時に、各国の代表選手やコーチとコミュニケーションをとって普及活動に繋げています。マウンテンランニングの国際連盟の選手委員会に加盟することで連盟と今後連携をとっていきたいです。最終的には連盟の活動やナショナルチームに関わることでマウンテンランニングの次世代を育成していきたいと考えています。

Q.今シーズンの意気込みを教えてください。

宮地選手
11月にアルゼンチンで世界大会があるため、まずは代表に選ばれて世界選手権で活躍できるように頑張りたいです。子供達に、自分に夢中になるものを見つければ始める年齢が遅くてもチャンスは掴めるという姿を見せていきたいと考えています。今年も代表になることで子供へのメッセージに説得力が増すと考えているので、選手としてだけではなく代表に関わることにはマウンテンランニング業界の第一人者としてこだわりたいですね。

Q.コラムを見ている人にメッセージをお願いします。

宮地選手
ドーピングは競技者にとっては死活問題であり、禁止物質の視点だと健康にも密接に関わる分野です。アンチ・ドーピングの啓発に関わる選手、スタッフ、企業いろんな立場の人がアンチ・ドーピングの重要性とフェアプレーの精神を世間に広めましょう!

プロフィール
宮地藤雄(みやちふじお)
2013〜2019マウンテンランニング日本代表

26歳から競技を始め、現在は海外レースの転戦をメインとしながら競技を続け、現在は、次世代育成とスポーツが身近にできる環境作りのためにジュニアトレイルラン大会を主催するなど多数の取り組みを行っている。その他にも、様々な体験をする中で、たくさんのことを学び、好奇心旺盛な大人に成長して欲しいという思いを実現するため、ジュニア世代に向けて活動を展開中。近年は日本在住の外国籍児童の参加も増えているため、スポーツを通じた国際交流にも力を入れている。